再会というご褒美。
友人とカフェで談笑していた時である。座っていた入口近くのテーブルからは、入店してくる人がよく見えた。あまり人の顔は見ないたちだが、いつもまじまじと見てしまうものがある。犬である。愛犬と一緒にカフェに来る人がうらやましい。いつか私も犬と暮らすぞ!と言い出して何年が過ぎただろうか。
余談はさておき、楽しげに入ってきた男性。目に入ってきたのは黒い丸い犬。
犬連れで青山のカフェに来るということはこの辺りにお住まいなのねなんて思いながら、
フレンチブルに見とれる。赤い散歩紐がお似合いのワンタ君に私はもう釘付けである。
目で追いながら彼らが着席したのはちょうど私たちの真後ろ。水を飲むワンタ君の姿にたまらない愛らしさを感じていた私に対し、飼い主の方はにっこりとほほ笑んでくださった。上品な方だ。しつけも抜群である。何度も振り返ってはブル君の動向をチェックする私。その時、なんと飼い主さんがこちらに歩いてくるのが見えた。
しまった、見すぎたか。。。
大人しくうつ向いていると「○○さん?」
彼が呼ぶのは私のラストネーム。
最近の私はこう呼ばれることがほとんどない。
なぜだ!!
「○○さんだよね!!!」
その時、彼は私がレコード会社のダメダメ社員だった頃の元上司であることを悟った。
こんなことってあるのだな。
「おおおーおひさしゅうございますー。20年ぶりじゃないですか!」
一人の人間が成人するくらいの月日。
「そうかなって思ってたんだよー。」
満面の笑顔で手を差し伸べてくれ、温かい握手を交わした。
私はなんだか泣きそうになった。あんなにヘタレだった私に対し、懐かしそうに、そして
嬉しそうに話しかけてくれたのだ。当時はいじけること数千回。今思いだしても見っともない。そんな私の心のつっかえが不思議と解けていくのがわかった。
再会には意味があると感じる。この再会がなければ、隅に追いやった自分をずっと体に中に残したままにしていただろう。ひとりにならずにもっとぶつかっていけばよかったと思った。
レミオロメンの太陽の下という曲の中の
「笑って心開いたらあなたのこと好きになった。もう少し素直に生きたいよ」
という歌詞が浮かぶ。20年前は、自分で自分を追い込むイジケ虫だったが、案外、それは取り越し苦労だったのかもしれないと感じられた。とても大きい見直しだった。
今でもついつい出てしまうそのパターン。
これからは、勝手に拗ねずにいこうと心底思った。
元上司の上にいた方は私の恩人である。大好きな人は数年前にこの世を去った。
きっと生前と変わらずお父さんのように私達を導いてくれたのかもしれないと感じている。
一人になっていかないで、イジケずにちゃんと向き合っていけば、そこには進展と成長が待っていることを忘れずにいよう。
その再会は、とびきりのプレゼントになった。